エチドカイン Etidocaine

6-5-2014 updated

電位依存性ナトリウムチャネル VGSC のブロッカーで,局所麻酔薬の一つ。Resting および inactivated 状態のチャネルに結合する(1)。

 

結合サイトは,以下の論文から F1764 と Y1771 であると考えられている。



作用機序に関する考察: Ragsdale et al (1994) より


神経細胞の静止膜電位は,約 -70 mV である。この状態では電位依存性ナトリウムチャネル VGSC は閉じており,resting state にある(1)。

 

一度活動電位が発生すると,VGSC は数百 ms で開口し(open state),大きなNa+ influx を生み出す。-> 跳躍伝導にも説明あり。その後,VGSC は inactivated state になる。

 

Etidocaineを使って,上記の各 state に応じた結合様式を詳しく調べた論文がある。

 

 

Xenopus 卵を使った実験系


> Rat brain type IIA Na+ channel を,Xenopus egg で発現させた。

: これは一般的な実験法で,卵を電気刺激して脱分極させることで VGSC を開口させることができる。

: この論文では,大体 15 ms の間膜電位を 0 mV にしている。

 

> 野生型のチャネルでは,spike の大きさが etidocaine で40%程度低下した。

: この tonic block は,主に etidocaine が resting state のチャネルに結合することによる。

: Holding potential は -90 mV である。

 

ここで,右の図(文献1を参考に作図)を参考に,ブロッカーの作用機序と活動電位の関係について少し深く考えてみる。

 

青い線はブロッカーがない状態の holding potential と,その状態で電気刺激を与えたときに生じる活動電位の関係を示したものである。論文では,normalized current となっており,神経細胞内へ流入する電流として捉えている。

 

例えば,静止膜電位を -100 mV に保ったときに生じる電流を 1 とする。図を見ると,これは静止膜電位が -90 mV であるときに生じる電流と同じである。

 

Holding potential が低いほど resting state VGSC が多い。


このことは,-100 mV でも -90 mV でも全ての電位依存性ナトリウムチャネルが閉じている(resting state にある)ことを示している。電気刺激で全ての VGSC が開くと考えられ,このときに流れる電流が 1 ということ。

 

次に,holding potential = -54 mV(図のV1/2)の点を考える。Holding potential が上昇(脱分極)すると,少しずつ開口している VGSC が増えてゆく。ちょうど半分が開口してしまい,電気刺激を与えても max の状態の半分しか電流が流れなくなる holding potential が V1/2 であり,この論文では約 -54 mV である。

 

Holding potential = -50 mV では,全ての VGSC が inactivated state にあり,電気刺激を与えても全く Na+ の流入が起こらなくなる。

 

 

エチドカイン処理


エチドカイン処理した区(赤線)では,以下のような変化が生じている。エチドカインは,resting および inactivated 状態のチャネルに一定の解離定数で結合し,開口を防ぐと考えてこの結果を解釈してみる。

 

  • 全ての holding potential で,刺激によって生じる電流が低下する。
  • 阻害効果は holding potential によって変わり,脱分極状態(-50 mV 寄り)で高い。
    • 例えば,-100 mV では阻害は35%程度である。
    • しかし,-60 mV (V1/2のちょっと左側)だと赤線はゼロ,青線には値があるので,阻害は100%である。
    • Inactivated 状態のチャネルの絶対量が多いために,阻害効果も高いと考えられる。
  • 阻害効果にはプラトーがあり,-90 mV でも -100 mV でも阻害の程度は変わらない。
    • このときは inactivated 状態のチャネルはないため,この35%の阻害は resting 状態のチャネルとの結合による。

 

Resting channel と etidocaine の結合の解離定数 dissociation constant は 325 µM である。 

 

エチドカインによる変異体チャネルの阻害


電位依存性ナトリウムチャネル IVS6 のどのアミノ酸が etidocaine の作用に重要であるかを調べるため,F1756 から F1776 をアラニンに置換した変異体を作り,同様の実験を行った。その結果,I1761A, F1764A, V1766A, V1767A, N1769A の5つの変異体が異なる応答を示した。

 

ここで重要なのは,変異体で応答が変わった理由として以下の2つが考えられることである。

  1. Etidocaine の結合様式が変わった。
  2. Voltage-dependence が変わった。

 

まず,2の場合に何が起こるかを見てみることにする。実際の図は小さくてよく見えないが,I1761A, V1767A, N1769A ではV1/2がネガティブ側にシフトしているらしい。

つまり右の図のような変化が起こっているということである。

 

この場合,同じ holding potential をかけたときに,刺激後に発生する電流が変異体の方が小さいということになる。

 

したがって,同じ holding potential では,変異体の方が inactivated 状態のチャネルの割合が高い。これが電位依存性の変化である。

 

このとき,inactivated 状態のチャネルが多いため,見かけ上 etidocaine の効果は高く出ることになる。


一方で,etidocaine と VGSC の結合性の変化は,グラフの左側の部分に生じる差異ではっきりと検証することができる。

右図のように,holding potential の効果がプラトーに達している状態で,etidocaine による阻害が明らかに強ければ,これは resting state の受容体と etidocaine の結合性が高いということを意味することになる。

 

このような阻害様式を示す変異体について解離定数などを検討し,F1764 と Y1771 がエチドカインの結合サイトであることを提唱している。


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References


  1. Ragsdale et al. 1994a. Molecular determinants of state-dependent block of Na+ channels by local anesthetics. Science 265, 1724-1728.