ピルビン酸カルボキシラーゼ (Pyruvate carboxylase, PC)

6-16-2016 updated


概要

とくに断らない限り,このページでは哺乳類の PC について記載する。

 

グルコースから解糖により生成されるピルビン酸は,以下のような代謝経路を辿る。

 

  1. ピルビン酸デヒドロゲナーゼによってアセチルCoAになる。アセチルCoAはTCA回路に入って酸化されるほか,脂質の合成にも使われる。
  2. ピルビン酸カルボキシラーゼによってオキサロ酢酸になる。オキサロ酢酸はTCA回路に入る(この経路を補充反応 alaplerosisという)ほか,糖新生や脂質の合成などにも利用される。

ピルビン酸カルボキシラーゼは2の代謝経路に関わる酵素で,ミトコンドリアに局在する。ATP依存的にピルビン酸 pyruvate のカルボキシル化を行い,オキサロ酢酸 oxaloacetate を生成する。EC 6.4.1.1。反応は以下の2つの式で表される(1)。

 

ATP + HCO3- + Ezn-biotin  <->  Enz-biotin-CO2 + ADP + Pi

Pyruvate + Enz-biotin-CO <->  Enz-biotin + oxaloacetate

 

TCA 回路は,大まかに言うとアセチル CoA を酸化しながら電子伝達系に流す NADH を作り出すための経路で,アセチル CoA は完全に酸化されてなくなってしまうわけではなく,オキサロ酢酸として次のサイクルに利用される。

 

したがって,TCA 回路の中間代謝産物がどこかへ流出していく状況(神経系におけるグルタミン酸合成など)がなければ,この経路に対するオキサロ酢酸の新規供給(補充反応 anaplerosis)はなくてもよい。

 

以上のことから,PC がオキサロ酢酸を作ることの意義は,1. 糖新生,2. 脂質合成,3. 補充反応,4. その他 にわけて考えることができる。

 

Wikipedia TCA回路より転載

糖新生における役割

糖新生は肝臓および腎臓で起こる。以下の反応は主に肝臓でのものである。

 

> 飢餓条件下では,TCA回路-電子伝達系によるATP産生よりも血糖値の維持が優先される。

> そのため,肝臓ではPCが活性化してオキサロ酢酸を作り,糖新生を行うことで血糖値を維持しようとする(1)。

 

> インスリンで抑制され,グルカゴンで活性化される(1)。

> 転写調節にはCREB, PPARγ,NF-Y,LXRなどが関わっている(1)。

脂質合成における役割

> PCは脂質合成を促進するが,そのメカニズムはやや複雑である(1)。

: クエン酸 citrate は,ミトコンドリアから細胞質へ輸送される。

: 細胞質で,ATP-citrate lyaseによって再びアセチルCoAとオキサロ酢酸になる。

: アセチルCoAはACCによってマロニルCoAになり,これが脂肪酸合成の原料になる。

 

> TCA回路からのクエン酸の流出が起こっているので,アセチルCoAとオキサロ酢酸が同程度に必要になってくる。

> これが,脂質合成の際にPCの活性が増大する理由である。ある意味で補充反応とも言える。

神経における役割

> 神経系では,神経伝達物質であるグルタミン酸 Glu が,TCA回路のα-ケトグルタル酸から合成される(1)。

> この反応は,ニューロンではなくアストロサイトで行われている(1)。

: アストロサイトには,他の糖新生酵素の活性が検出できない。

: ニューロンではPCの活性が検出されない。

β細胞における役割

> 膵臓β細胞では糖新生も脂肪酸合成も行われないが,PCの活性が肝臓や腎臓と同程度に高い(1)。

> PDHとPCによるピルビン酸分解の程度が,インスリン分泌に関わっていると考えられている(1)。

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References

  1. Jitrapakdee et al. 2006a (Review). Anaplerotic roles of pyruvate carboxylase in mammalian tissues. Cell Mol Life Sci 63, 843-854.