パルブアルブミン, parvalbumin

7-13-2015 updated

  1. 概要: パルブアルブミンとは
  2. 構造
  3. 脳のパルブアルブミン
  4. 筋肉のパルブアルブミン
  5. PV の免疫染色

関連項目

  • 介在ニューロン interneuron にマウス脳の PV とカルレチニンの免疫染色像があります。
  • シナプス synapse



概要: パルブアルブミンとは

パルブアルブミン parvalbumin は,細胞内に局在する低分子の Ca2+ 結合タンパク質で,Ca2+ が関与する多くの生命活動に関係している(7)。

 

> 1934 年に,Deuticke が魚類および両生類の筋肉から初めて存在を報告した(7)。

: アルブミンとは関係がないが,低分子で水溶性の点が共通していたためにこのように名付けられた。

 

> ラットでは骨,歯,皮膚,脳,前立腺,精子,精巣,卵巣で発現が報告されている(7)。

> 腫瘍マーカー,アレルゲンとしても研究が進んでいる(7)。

> ヘビがカエルをみつけるときに分子認識も PV で行われているらしい(7)。

 

構造

> pI 4.1 - 5.2, 分子量 10 - 12.5 kDa のタンパク質で,1 分子あたり 2 分子の Ca2+ と結合する(7)。

 

> ヒトおよび齧歯類 PV は Glu, Asn, Phe に富み His, Pro, Cys, Met, Tyr, Trp をほとんど含まない(7)。

: Chicken PV はアミノ酸組成が異なっている。

: 魚類 PV のみが Cys を含むことで知られている。Ala を多く含むのも魚類 PV の特徴である。

 

> A - F で表される 6 個の EF-hand motif をもつ(7)。

: EF-hand motif は PV の構造からつけられた名前である。E helix と F helix が手のような形で配置する。

: EF-hand はカルシウム結合モチーフで,カルモジュリンなど多くの Ca2+ 結合タンパクに共通である。

 

> 構造が TnC, ミオシン軽鎖,cAMP phosphodiesterase に似ており,分子系統にも有用である(7)。

 


脳 brain のパルブアルブミン

分布

brain では,GABA 作動性のニューロン neuron の一部に存在する(1,2)。これらは介在ニューロン interneuron の一部として分類されており,PV-positive interneuron と呼ばれる。脳波 EEG の維持などに重要であるとされる。

 

神経細胞で発現する PV は,流入した Ca2+ に結合することで K+ の流入を防ぎ,afterhyperpolarization を抑制すると考えられている(1D)。つまり,神経が興奮から回復するのに必要な時間を短くする 作用がある。


実際に,PV の発現量は neural activity を反映することが示されている(9)。

 

> Rat cortex で,スライスあたりの PV-positive cell 数を 15 倍してcortex 全体の数としている(8)。

: 2000 - 6000 cells/mm3 個ぐらいのオーダーで存在する。

 

> Rat somatosensory cortex では,GABAergic neuron の約 70% が PV を発現(1R)。

: 大脳皮質では,PV はほとんど GABAergic neuron のみで発現する。

: 網膜 retina からの神経やコルチ器では,GABA のない神経でも発現が確認されている。

  

> Mouse cortex では,全ての PV-positive neuron で GAD67 が発現している(6R)。

: GAD67 は GABAergic neuron のマーカーである。

: Mouse cortex では,パルブアルブミンとカルレチニンは共局在しない。


統合失調症との関係

> PV KO mice は,epileptic seazure を示す(7)。 

> 統合失調症 schizophrenia の患者で,PV を発現する細胞の数が低下していることが多い。

: 統合失調症モデル MAM rat では,mPFC, OFC, vHipp で PV-positive cell が少ない(8)。


筋肉 muscle のパルブアルブミン

カルシウムイオン Ca2+ は,脊椎動物の骨格筋において収縮 contraction と弛緩 relaxation の重要な調節因子である。

 

> 筋小胞体から細胞質に Ca2+ が放出されると,筋肉が収縮する(7)。

> 筋小胞体に Ca2+ が吸収されると弛緩する(7)。

> PV は Ca2+ の回収に関与しており,すばやく弛緩することが必要な筋肉で多く発現している(7)。

> 魚類が遊泳に使う筋肉で機能の研究が進んでいる(7)。


パルブアルブミンの免疫染色

蛍光染色

Substance P receptor は,海馬 hippocampus GABAergic interneuron で PV と共発現しており,その発現は病気などで PV の発現が消えても残るとされている。したがって,この 2 つのタンパク質の発現を同時に見ることで,PV の発現が低下傾向にあるかどうかを推定することができる(10)。


凍結切片:

  • ラット嗅球 olfactory bulb, 灌流固定,40 µm の凍結切片,free floating method で 染色,DAB で検出。また GAD67 との蛍光二重染色も行っている(2)。

 

ビブラトーム:

  • ラット大脳皮質と海馬。灌流固定後にビブラトームで 50 µm の切片を作り,GAD67 との蛍光二重染色。観察はスライドガラス上,Vectashield でマウントしている(3)。

 

パラフィン切片:

  • 20 µm 切片。PV, GAD67 を別々に3,30-diaminobenzidine で検出し,二重染色はしていない。パラフィン切片だが,CFSE を使って蛍光の撮影もしている(4)。
  • Wister rat 視床 2 µm の切片を脱パラ,swine serum でバックグラウンドを抑えたのち,endonuclease G と parvalbumin, EndG/NeuN, EndG/GFAP の蛍光二重染色を行っている(5)。

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References

  1. Celio 1986a. Parvalbumin in most gamma-aminobutyric acid-containing neurons of the rat cerebral cortex. Science 231, 995-997.
  2. Hwang et al. 2003a. Age-related changes of parvalbumin immunoreactive neurons in the rat main olfactory bulb. Moll Cells 16, 302-306.
  3. Lodge et al. 2009a. A loss of parvalbumin-containing interneurons is associated with diminished oscillatory activity in an animal model of schizophrenia. J Neurosci 29, 2344-2354.
  4. Kigawa et al. 2014a. Stem cell therapy: a new approach to the treatment of refractory depression. J Neural Transm, online.
  5. Nielsen et al. 2008a. Endonuclease G expression in thalamic reticular nucleus after global cerebral ischemia. Exp Brain Res 190, 81-89.
  6. Kim et al. 2012a. System-wide immunohistochemical analysis of protein co-localization. PLoS One 7, e32043.
  7. Arif 2009a (Review)A Ca2+-binding protein with numerous roles and uses: parvalbumin in molecular biology and physiology. BioEssays 31. 410-421.
  8. Gastambide et al. 2012a. Selective remediation of reversal learning deficits in the neurodevelopmental MAM model of schizophrenia by a novel mGlu5 positive allosteric modulator. Neuropsychopharmacology 37, 1057-1066.
  9. Sun et al. 2009a. Experience-dependent intrinsic plasticity in interneurons of barrel cortex layer IV. J Nurophysiol 102, 2955-2973.
  10. Gill and Grace 2014a. Corresponding decrease in neuronal markers signals progressive parvalbumin neuron loss in MAM schizophrenia model. Int J Neuropsychopharmacology 17, 1609-1619.