レプチン Leptin

2020/09/30 Last update

 

このページは レプチン @本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが、最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 


  1. 概要: レプチンとは
    • 短期作用
    • 長期作用
    • レプチン抵抗性
  2. 合成および分泌の制御
    • 分泌を促進するもの
    • 分泌を阻害するもの
  3. 脳での働き
  4. 下流シグナル
  5. その他未整理


レプチンとは

レプチン leptin は 成熟脂肪細胞から分泌 され,食欲 appetite や代謝の制御を行う分子量約 16 kDa のペプチドホルモンである。 視床下部 hypothalamus などに作用して 食欲を抑制 する作用をもつことから,満腹ホルモン などとも呼ばれる。


レプチンの機能は,短期作用と長期作用に分けて考えることができる。長期作用の方が重要とする意見がやや優勢である。

 

レプチンは,短期でも長期でも,原則として肥満にならない(エネルギーを消費する)方向に働く。すなわち,食欲を抑制するとともに交感神経の活動を亢進させ,活動性の亢進,体温上昇,脂肪燃焼の促進などの作用を示す(4I)。

 

肥満 obesity 症状を示すマウスの系統 ob/ob mice の原因遺伝子として同定された。つまり,レプチンが欠損していると右の写真のように極度の肥満を呈するということ。

 

レプチン受容体 leptin receptor の変異体 db/db mice も同様に肥満になる。フレームシフトによる遺伝病も知られている(8)。

レプチンを作れないマウス(左)と通常のマウス(右)。画像は 8 より。


 

以下のようなレプチンの機能が列挙されている(16)。

  • 食欲,エネルギー消費の制御
  • 性成熟の制御
  • 造血 hematopoiesis
  • 骨の代謝
  • 視床下部 - 生殖腺系の制御

短期作用

短期作用に関する知見の多くは,レプチンを注射する実験から得られている。



長期作用

レプチンは成熟脂肪細胞から分泌されるホルモンであり,血中レプチン量は脂肪組織 adipose tissue の量と相関する(8)。



レプチン抵抗性

肥満者の多くは,脂肪細胞が多いために血中レプチン濃度が高い。しかし,食欲も正常体重者より高く,脂肪燃焼も血中レプチン濃度から考えられるほど行われていない。


これは一見矛盾のようであるが,肥満者はレプチンが脳に作用しにくくなっている状態,すなわちレプチン抵抗性に陥っているためと理解することができる。


合成および分泌の制御

哺乳類では,脂肪細胞でのレプチン産生は転写,翻訳,貯蔵,分泌と多くの段階で制御されている(9)。


分泌を促進するもの

> 摂食,とくに食事中に含まれるロイシン Leu が食後の血中レプチン量を増加させる(10)。

> EPA(11)

> インスリン(12)

> グレリン(13)

 

> 女性ホルモンのエストロゲン estrogen は,レプチンの分泌を促進する(4D)。

: 一般に血中レプチン量は男性よりも女性の方が多い(16)。

 

分泌を阻害するもの

> 絶食(14)

> 成長ホルモン(15)

 


脳での働き

食欲を抑制する方向に働く。メカニズムは,視床下部への作用と,中脳 midbrain での報酬系 reward system への作用に分けて考えることができる(1I)。大脳皮質 cortex も影響を受けるようである。

> 食物による報酬系 reward system の活性化を打ち消す方向に働く(5)。

> Insula, parieta/temporal cortex の空腹に伴う活性化を抑制する(1I)。

 

> Prefrontal cortex で満腹に伴う活性化を増やす(1I)。

> Prefrontal cortex で,食べ物の写真による fMRI シグナルの活性化を促進する(2)。

: PFC は高次の脳機能を司る部位で,この場合は食べたい気持ちを抑制していると考えられている。

 

> Arcuate nucleus で neuropeptide Y neurons を抑制し,食欲を減衰させる(16)。

> トランスポーターがあるため,血液脳関門 BBB を通過できる(2)。なおグレリンも同様である。

> キンギョに組み換えマウスレプチンを注射すると,食欲抑制作用を示す(6)。


下流シグナル

> AMPK をリン酸化して活性化する(3D)。

> STAT, JAK2, SOCS3 などがシグナル伝達に関与する(8)。


その他未整理

  • Growth hormone 4-helical cytokine subfamily に属する(16)。

コメント: 0

References

  1. Thanos et al. 2013a. Obese rats deficient leptin signaling exhibit hightened sensitivity to olfactory food cues. Synapse 67, 171-178.
  2. Gibson et al. 2010a (Review). Neuroimaging, gut peptides and obesity: novel studies of the neurobiology of appetite. J Neuroendocrinol 22, 833-845.
  3. Becer et al. 2013a. Association of leptin receptor gene Q223R polymorphism on lipid profiles in comparison study between obese and non-obese subjects. Gene 529, 16-20.
  4. 近藤ら 2012b. レプチン受容体遺伝子多型Lys109Arg及びGln223Argと肥満の関連. 名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報, 5, 33-38.
  5. Volkow et al. 2011a (Review). Reward, dopamine and the control of food intake: implications for obesity. Trends Cogn Sci 15, 37-46.
  6. Volkoff et al. 2003a. Role of leptin in the control of feeding of goldfish Carassius auratus: interactions with cholecystokinin, neuropeptide Y and orexin A, and modulation by fasting. Brain Res 972, 90-109.
  7. "Fatmouse" by The original uploader was Bigplankton at English Wikipedia Later versions were uploaded by Sunholm at en.wikipedia. - Human Genome wall for SC99 on ornl.gov. Copied from en.wikipedia; description page is/was here.. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
  8. Friedman 2002a. The function of leptin in nutrition, weight and physiology. Nutr Rev, 60, S1-S14.
  9. Lee & Fried 2006a. Multilevel regulation of leptin storage, turnover, and secretion by feeding and insulin in rat adipose tissue. J Lipid Res 47, 1984-1993.
  10. Lynch et al. 2006a. Leucine in food mediates some of the postprandial rise in plasma leptin concentrations. Am J Physiol Endocrinol Metab 291, E621-630.
  1. Perez-Matute et al. 2005a. Eicosapentaenoic fatty acid increases leptin secretion from primary cultured rat adipocytes: role of glucose metabolism. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 288, R1682-R1688.
  2. Ricci et al. 2005a. Isoproterenol decreases leptin release from rat and human adipose tissue through posttranscriptional mechanisms. Am J Physiol Endocrinol Metab 288, E798-E804.
  3. Giovambattista et al. 2008a. Ghrelin gene-related peptides modulate rat white adiposity. Vitam Horm 77, 171-205.
  4. Szkudelski et al. 2004a. Short-term fasting and lipolytic activity in rat adipocytes. Horm Metab Res 36, 667-673.
  5. Margetic et al. 2002a. Leptin: a review of its peripheral actions and interactions. Int J Obes 26, 1407-1433.
  6. Adamczak & Wiecek. 2013a (Review). The adipose tissue as an endocrine organ. Semin Nephrol 33, 2-13.