Akt/PKB, プロテインキナーゼB

2018/08/13 Last update

 

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  1. 概要: Akt とは

関連項目

インスリンシグナル:
insulin
, IGF-I (
mammals
),
IGF-IR



概要: Akt とは

Akt の機能は多岐にわたるため,とりあえずは手当り次第に列挙する。まとまってきたところから整理。

 

Akt の標的に関するレビュー(1)より,

  • Ser473 は mTORC によってリン酸化され,PHLPP で脱リン酸化される。
  • Akt minimal recognition motif は,RXRXXS/TB である。
  • Dominant-negative Aktを作りたいとき,kinase domain をいじるよりも,リン酸化されなくした方が有効である。
  • myr-Akt は,まちがったシグナルを伝えることもある。
  • phospho-mimic Akt は,活性は弱いが使えるらしい。
  • Akt 基質は100以上にのぼり,そのうちの 25% は Akt substrate の配列を含まない。
  • Foxo1 は Fas ligand や BIM の転写を活性化し,アポトーシスを引き起こす方向に働く。
  • Akt は MDM2 を活性化し,MDM2 は p53 を阻害する。p53 は Puma Noxa を促進して apoptosis を起こす。
  • Akt は p27 をリン酸化する。p27 は 14-3-3 と結合して細胞質へ移行し,細胞周期が回ることになる。
  • Akt は GSK3 をリン酸化阻害する。GSK3 は SREBP を分解するので,よって Akt は脂肪蓄積を促進することになる。
  • Akt は HIF-1α を活性化する。HIF-1α は解糖系を活性化する。これはおそらくガン細胞で起こっている現象である。

コメント: 1
  • #1

    卒論生 (土曜日, 04 4月 2015 19:38)

    Aktは腫瘍に関係し、growth factor、サイトカイン、ストレスなどで活性化される(1)。lipid-binding pleckstrin homology domainを介して、PIP3により膜へリクルートされる。

    Aktをリン酸化する分子
    Ser473がリン酸化されていないと、Thr308のリン酸化は起こらない(2)。
    PDK1がThr308を、PDK2がSer473を、それぞれリン酸化する(1)。
    Ser473は、mTORC2によってもリン酸化される(2)。
    ラット筋細胞ではNGFおよびbFGFがAktをリン酸化する(7)。

    基質
    基質が共通してもっているモチーフはRXRXXS/TBである。100以上の基質が知られている。そのうち25%は共通もチーフをもたない(2)。
    GSK3をリン酸化阻害する:グリコーゲンの貯蔵(1)、cyclin D、 Eをリン酸化で活性化するので、細胞周期をAktが促進することになる(2)。
    GLUT4:糖取り込みに関わる。AS160、PIKfyveに依存的なメカニズムがある(2)。
    p70S6K:S6をリン酸化し、タンパク質合成に関与。
    BAD、caspase-3:PI3Kにより不活性化し、anti-apoptoticシグナルを流す。
    HIFa:mTORC-dependentにHIF1a、 bのタンパク質を増大させる。これはガン細胞で解糖系を亢進。また、VEGFの分泌を促進する(2)。


    マウスのAkt

    Akt 1、 2、 3があり、異なる遺伝子にコードされる。Akt1は成長、Akt2は代謝に重要と考えられている(5)。発現している組織は、Akt1、 2:筋肉、胸腺、脳、心臓、肺。Akt3:脳、精巣。

    KO mice(Akt1)
    一部が致死で、成長が遅れる。

    KO mice(Akt2)
    普通に成長し、insulin resistantになる。

    リン酸化
    PDKにPIP3依存的にThr308とSer473をリン酸化される。標的配列RXRXXS/T。

    基質
    GSK-3betaのSer9をリン酸化して不活性化する。

    筋分化
    L6筋芽細胞でmyogeninの発現を増やす(3)。この細胞は、もともとIGFの発現量が少ない。
    筋分化に重要なAktの基質は不明であるが、p70S6K、GSK、mTORなどが重要とされている(4)。ラパマイシンには筋分化を促進する作用と阻害する作用の両方があるらしい。

    活性化機構
    1. PHドメインのあるN末端側でダイマー、オリゴマーを形成する。これが、活性化に重要である。
    2. また、PtdIns-3、 4-P2がPHドメインに結合することでも活性化する。
    以上の2つの経路と、Akt自身のリン酸化で、Aktの活性は制御されている。


    線虫 C. elegansのAkt(6)
    ゲノム上にはakt-1、 2の2種がある。
    akt-1からは、 選択的スプライシングによってakt-1aとakt-1bができる。Thr308、 Ser473を両方もつ。
    akt-2はakt-1と66%のアミノ酸同一率を示す。Thr308はあるが、Ser473はない。

    恒常活性型akt-1や通常のakt-1を過剰発現すると、耐性幼虫化が阻害される。しかし寿命には影響しない。
    akt-2では、耐性幼虫化の阻害が不十分。→2つのaktはリダンダントであるが、akt-1の方が大切。
    daf-2変異体のdauer arrestは、aktでは完全にはレスキューされない。daf-16で完全にレスキューされる。
      →age-1とdaf-2の下流は部分的にparallelで、DAF-16でシグナルが合流する。
    akt-1::GFPは、神経系を中心とする多様な組織で発現していた。


    1. Kops et al. Journal of Molecular Medicine: 77、 656-665、 1999
    2. Manning & Cantley 2007 (Review). AKT/PKB signaling: navigating downstream. Cell 129、 1261-1274.
    3. de Arcangelis V. IGF-I-induced differentiation of L6 myogenic cells requires the activity of cAMP-phosphodiesterase. Mol Biol Cell、14、 1392-1404、 2003
    4. Hribal ML、 Nakae J、 Kitamura T、 Shutter JR、 Accili D. Regulation of insulin-like growth factor-dependent myoblast differentiation by Foxo forkhead transcription factors. J Cell Biol、 162、 535-541、 2003.
    5. Shavlakadze T、 Grounds M. Of bears、 frogs、 meat、 mice and men: complexity of factors affecting skeletal muscle mass and fat. BioEssays、 28、 994-1009、 2006
    6. Paradis S、 Ruvkun G. Caenorhabditis elegans Akt/PKB transduces insulin receptor-like signals from AGE-1 PI3 kinase to the DAF-16 transcription factor. Genes Dev、 12; 2488-2498 (1998)
    7. Reddypalli S, Roll K, Lee HK, Lundell M, Barea-Rodriguez E, Wheeler EF. p75NTR-mediated signaling promotes the survival of myoblasts and influences muscle strength. J Cell Physiol, 204, 819-29, 2005


References

  1. Manning & Cantley 2007a (Review). AKT/PKB signaling: navigating downstream. Cell 129, 1261-1274.