食欲の制御 Appetite regulation

2-6-2014 updated

  1. 概要
  2. 食欲の内分泌制御
  3. Hanger - satiety 系による制御
  4. 報酬系による制御
  5. 視覚による制御
  6. Default network との関連


概要

Researcher

General


食欲は,数多くの経路によって複雑な制御を受けている。重要な器官は腸および脳である(2)。食欲制御に関連する経路は以下のように分類することができる。

 

Homeostatic/hedonic pathways (1I, 2)

 

恒常性または快楽による制御。前者は,体のエネルギー状態に応じて食欲を制御する。後者は食べたことの満足感による制御であり,前者より優先される場合がある。満腹でも美味しいものにはつい手が出てしまうような現象には,後者の制御を強く受けていると言える。

 

Homeostatic regulation には内分泌系の影響が強く,脳では視床下部 hypothalamus と脳幹 brainstem が主に関与する。一方,hedonic regulation は主に神経系に支配されており,prefrontal cortex などの感覚系ドーパミン dopamine 神経と関係が深い。

Endocrine/neuronal regulation

 

メカニズム的な分類である。しかし,食欲制御に関わる内分泌因子として有名なレプチン leptin の受容体は,脳の食欲制御に関わる神経で主に発現しているなど,内分泌系は原則として神経系の作用を増強または抑制することで食欲を制御している。

食欲の内分泌制御 Endocrine regulation of appetite

Researcher


内分泌系では,レプチン leptin,グレリン ghrelin,インスリン insulin,オレキシン orexin,神経ペプチドYなどが関与することが知られている。

 

上で述べたように,食欲の制御においてはこれらは原則として脳 brain にある受容体に作用し,神経系の作用を増強または抑制している。

Hanger - satiety 系による制御

Researcher


神経系による食欲制御は,hunger-satiety 系および報酬系 reward system の2つに分けることができる。

 

前者の上流には,腸 gut が存在する(2)。腸からの刺激は迷走神経 vagus nerve を経て脳幹 brain stem へ,さらに視床下部 hypothalamus へ伝わる。視床下部では,神経核 arcuate nuscles(ARC)や満腹中枢 VMH が有名である。

 

 

視床下部 Hypothalamus


> グルコースを食べると,視床下部のBOLDシグナルは低下する(4)。食欲抑制に関係しているかもしれない。

: 低下は19.5 - 25.5分後にみられ,血糖値上昇の前。したがって腸による制御が示唆される。

: 肥満ラットよりも痩せたラットの方が低下する。

報酬系による制御 Reward system

Researcher


おいしいもの(とくに糖,脂質に富む高カロリーな食べ物)は,とくに栄養上必要とされていなくても食べたい気持ちになる。これが報酬系 reward system による制御である(5)。

 

おいしいものを食べたときに感じる快楽が食欲を引き起こすとも言える。これには辺縁系 limbic region や大脳皮質 cortex のinsula, ACC やドーパミン系が関与しており,麻薬やアルコールなどによる快楽と同じメカニズムである。

> 関連する神経伝達物質または神経ペプチド(5)

: dopamine, cannabinoids, opioids, serotonin; orexin, leptin, ghrelin

視覚による制御

Researcher


食べ物の写真は,実際にそれを食べた状態を想像させる food cue として研究に使用される。一般に,肥満したヒトや動物の方が,様々な面で food cue に対する反応が高いことが示されている。

> Food cue によって活性化される部位は多数報告されており,はっきりしたコンセンサスはない(3D)。

 

> 文献3は,比較的多くの部位が活性化され,かつその程度が肥満のヒトで高い傾向にあると主張(3R)。

: 肥満または通常の女性に,高カロリー食または低カロリー食の写真を見せたときのfMRI応答。

: 肥満 > 通常,高カロリー > 低カロリー という活性化が顕著で,以下の部位でみられた。

: Medial/lateral OFC, insula, anterior cingulate cortex, ventral pallidum, caudate, putamen, hippocampus.

Default network との関連

Researcher


上の項目は,主に刺激に伴う脳 brain の活性化と肥満の関係についてのものである。しかし,脳は特定の刺激がないときも活発に fMRI で検出されるような活動をしており,これがヒトの思考に関わっていると考えられている。このような脳の活動を default network という。default mode network とも呼ばれる。

> Default network は,脳のエネルギー消費の60 - 80%を占める(6I)。

> 肥満者と健常者の間で,default network を比較した報告がある(6R)。

: 肥満グループの対象者は reduced-obese (RO) と呼ばれ,再び肥満になる傾向が強い群とされる。

: しかし,BMI はそれぞれ 27.5 と 21.6 で,RO も依然として肥満者である。

: Posterior cingulate で,RO の人の fMRI シグナルが強い。

: Left pariental cortex の活性と食欲が,RO でも健常者でも正の相関を示した。

: 満腹にすると cingulate の活性が上がり,これは RO と健常者の間で差がなかった。

References

  1. Thanos et al. 2013a. Obese rats deficient leptin signaling exhibit hightened sensitivity to olfactory food cues. Synapse 67, 171-178.
  2. Gibson et al. 2010a (Review). Neuroimaging, gut peptides and obesity: novel studies of the neurobiology of appetite. J Neuroendocrinol 22, 833-845.
  3. Stoeckel et al. 2008a. Widespread reward-system activation in obese women in response to pictures of high-calorie foods. NeuroImage 41, 636-647.
  4. Chen et al. 2007a. Functional magnetic resonance imaging and immunohistochemical study of hypothalamic function following oral glucose ingestion in rats. Chin Med J 120, 1232-1235. 
  5. Volkow et al. 2011a (Review). Reward, dopamine and the control of food intake: implications for obesity. Trends Cogn Sci 15, 37-46.
  6. Tregellas et al. 2011a. Altered default network activity in obesity. Obesity 19, 2316-2321.