グルタミン酸-グルタミンサイクル Glu-Gln cycle


8-6-2017 Last update

 

このページは グルタミン @本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが,最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 



概要


上の図は文献1から,右の図はWikipedia「シナプス」よりそれぞれ転載。

右図で2がグルタミン酸を含む小胞,5が受容体である。

 

  1. Neuron のシナプス前膜 presynaptic membrane からシナプス間隙 synaptic cleft に放出されたGlu は,シナプス後膜 postsynaptic membrame の受容体に結合し,活動電位を発生させる。
  2. そのままだとニューロンが興奮しっ放しになってしまうので,Glu は速やかにアストロサイト astrocyte に取り込まれる。アストロサイト内では,Glu はグルタミン合成酵素によってグルタミン Gln に変換される。
  3. グルタミンはアストロサイトから放出される。ニューロンはこれを取り込んで Glu に変換し再利用する。

 

 

 

シナプス模式図


 

 


> Glu-Gln サイクルの意義は,Glu を速やかにシナプス間隙から除去しつつリサイクルすること。

: アンモニア解毒の可能性も考えられるが,Gln 合成量は解毒すべきアンモニア量よりも多い(6)。

: 体内のアンモニア濃度が高いと,alaplerosis の寄与が 30% 強まで増える(2)。

 

> ラット大脳皮質では,脳内の Glu の70-80%程度を生み出している。残りは補充反応 anaplerosisによる(2)。 

> ニューロンでGlnからGluを作る加水分解反応は,PAG (phosphate-activated glutaminase) が触媒する(3)。

> アストロサイトに取り込まれたGluは,TCA回路に入って分解されることもある(3)。


Glu-Gln cycle flux

> ニューロンでは Glu-Gln cycle が活発であり,その flux である Vcycle が測定されている(1I)。

: 麻酔をかけられたラットでは,ニューロンのTCA回路のfluxの 30 - 42%程度。

: 覚醒状態のラットやヒトの大脳皮質では,neuronal TCA flux の 38-50%程度。

Condition (tissue, experimental conditions, etc)   Vcycle 

(mmol/kg/min, mean ± SD)  

Ref 
 ヒトの脳。実際には測定せずに文献値を使用 0.33 of VtcaN(ニューロンのTCA flux) と定義
 

 

 

 

Condition (tissue, experimental conditions, etc)   Vcycle 

(mmol/kg/min, mean ± SD)  

Ref 
 Halothane で麻酔したラットの脳。灰白質,白質が混ざった値 0.25
 

 

 

 

計算式

Vcycle を計算するための微分方程式として,以下のような関係式が用いられている(4)。

 

  • nGlu/dt = Vcycle + nVxKGGlu - [Vcycle + nVxGluKG]
  • aGlu/dt = Vcycle + aVxKGGlu - [ Vgln + aVxGluKG]
  • Gln/dt = Vgln - [Vpc + Vcycle]

 

それぞれの文字の意味は以下の通りである。

  • nGlu/dt: 神経細胞のグルタミン酸濃度の変化率
  • aGlu/dt: アストロサイトのグルタミン酸濃度の変化率
  • nVxKGGlu, nVxGluKG: ニューロンにおける α-ケトグルタル酸から Glu へのflux
  •  Vgln = Vpc + Vcycle: グルタミン酸生合成の速度 
  •  Vpc: ピルビン酸カルボキシラーゼを介した flux 

コメント: 0

References

  1. Patel et al. 2005a. The contribution of GABA to glutamate/glutamine cycling and energy metabolism in the rat cortex in vivo. PNAS 102, 5588-5593.
  2. Sibson 2001a. In vivo 13C NMR measurement of neurotransmitter glutamate cycling, anaplerosis and TCA cycle flux in rat brain during [2-13C]glucose infusion. J Neurochem 76, 975-989.
  3. de Graaf et al. 2003a (Review). In vivo 1H-[13C]-NMR spectroscopy of cerebral metabolism. NMR Biomed 16, 339-357. 
  4. Herzog et al. 2013a. Lactate preserves neuronal metabolism and function following antecent recurrent hypoglycemia. J Clin Invest 123, 1988-1998.
  5. Boumezbeur et al. 2010a. The contribution of blood lactate to brain energy metabolism in humans measured by dynamic 13C nuclear magnetic resonance spectroscopy. J Neurosci 30, 13983-13911.