発火頻度 Firing fate

6-17-2014 updated

 

  1. 概要: 発火とは
  2. 情報処理器官としての脳・神経
  3. ラスタープロット Raster plot

概要: 発火とは


神経細胞 neuron では,外界からの刺激などに応じてNa+イオンが細胞内に一過的に流入し,活動電位 action potential が発生する。これを発火 firing という。概要を箇条書きで示す。

 

  • 神経の発火が起こる頻度を 発火頻度 firing rate といい,通常は何回/秒の単位 Hz で表す。
  • 生物学的には発火のタイミングが重要であり,活動電位の大きさやピークの形は重要でない。
  • 発火頻度が高いほど,その領域の神経活動が活発であると単純に理解して良い。

 

参考: 活動電位が発生するメカニズム

 

  1. 静止膜電位で平衡状態にあるニューロンに刺激が加わると,細胞膜の一部が脱分極 depolarization する。
  2. その結果,電位依存性Na+チャネルが開く。
  3. Na+が細胞外から流入する。このとき,濃度勾配と電位差の両方が駆動力となるため,その流入速度は非常に早い。
  4. 細胞内の電位が上昇(脱分極; これが 活動電位 action potential)するに従い,さらに多くの電位依存性Na+チャネルが開く。典型的なポジティブフィードバックである。
  5. 膜電位が 30 mV 程度になると,Na+チャネルの電位感受性不活性化ゲートが閉じ,Na+の流入が止まる。
  6. 電位依存性K+チャネルの電位感受性活性化ゲートが開き,K+の流出が始まる。このとき膜電位は既に逆転しているので,この場合も濃度勾配と電位差の両方が推進力となる。
  7. K+の流出によって細胞は再分極 repolarization する。このとき,K+チャネルが少し遅れて閉じるため,静止膜電位は -70 mV よりも少し低くなる。過分極状態であり,アンダーシュートともいう。

 

 

情報処理機関としての脳・神経


eye などの感覚器から受け取った情報は,脳 brain に伝えられて処理されることになるが,脳での情報処理の実態は,膨大な数のニューロンの発火パターンである。この点において,脳での情報処理はデジタルであると言える。

 

活動電位 action potential が発生する際に,どれだけ電位が上昇するかは,電位依存性Na+チャネルの特性による。上の説明でみるように,一般には電位は -70 mV から 30 mV 程度まで変化するが,その変化の度合いは長い軸索の部位によって異なっている(1)。つまり,電位の上昇分には情報としての価値はなく,発火するかしないかというパターンが重要になる。繰り返しになるが,デジタルな情報処理である。

 

このことから,発火頻度 firing rate が情報として高い価値をもっていることがわかる。 頻度が高いほど,ある情報を確実に他の細胞に伝えているものと考えられる。

> 発火頻度の分布は,ランダムでポワソン過程で近似できるものから,規則性の高いものまで様々(1)。

: 多くの場合,情報は平均発火頻度の時間的な変化によって運ばれていると考えられている。

: それに加えて,発火のタイミングも情報伝達において重要であるとする説もある。

 

> 個々のニューロンは,自分の担当する刺激に対して,他のニューロンとは独立に確率的に発火する(2)。

: Cell assembry 仮説: 同時に発火しているニューロンの組み合わせが,特定の事象を表現する。

: 組み合わせのパターンを使うことで,少ない数のニューロンで多くの事象を表せるようになる。

ラスタープロット Raster plot


上記のように,神経では発火のタイミングのみが重要であるので,横軸に時間をとり,発火のタイミングを記録する図が神経活動の記録として用いられる。これはラスタープロット raster plot と呼ばれる。

 

右の図は,文献2を参考に MATLAB で作成した raster plot である。300 - 600 ms で発火の頻度が上昇しており,300 ms あたりで何かの刺激があったことを示唆するデータである。



References

  1. 内田 2007a. 神経細胞の膜電位がもつ双安定性と状態遷移: その仕組みと情報処理における役割. 生物物理 47, 362-367.
  2. 銅谷 2005a (Review). ニューロンのデータ解析. 数理科学 507, 1-8.