膜電位の双安定性 Bistability of membrane potential

4-26-2014 updated

神経 neuron の静止膜電位は約 -70 mV とされるが,実際にはより分極したダウン状態と,そうでないアップ状態があり,どちらの状態でも安定になる。これを双安定性 bistability という。

 

活動電位の上昇は,ほぼアップ状態でのみ起こるので(1),膜電位がどちらの状態にあるかは非常に重要である。

 

このような双安定性は,大脳皮質 cortex, 線条体 striatum, 小脳 cerebellum でよく報告されている(1)。細胞内カルシウム濃度の上昇と,アップ状態がよく対応することもわかっている(1)。

> Bistability は神経ネットワークの安定に重要で,辺縁系からの情報を統合する際にゲートとして働く(2D)。


線条体 Striatum


線条体の90-95%を占める中型有棘細胞 medium spiny neuron (MSN) で,双安定性がみられる(1)。

 

> 麻酔下および深い眠りにあるラットで双安定性がみられる(1)。

: その意義は不明だが,覚醒状態ではみられないため,睡眠中の情報処理に関係しているかもしれない。

: 線条体と運動との関わりから,動いている状態での膜電位を調べたいが,現在の技術では不可能。

 

> 大脳皮質からの入力を遮断すると,ダウン状態からアップ状態への遷移がみられなくなる(1)。

: 大脳皮質によって制御されていることを示唆する。


小脳・プルキンエ細胞


小脳のプルキンエ細胞 Purkinje cells も,膜電位の双安定性を示す(1)。小脳も運動に関わる器官であり,脊髄などから運動に関する情報を受け取っている。また,感覚情報も受け取っている。

 

プルキンエ細胞は,小脳が処理した情報を出力する細胞である。

 


大脳皮質


> 脳 brain の切片でも双安定性が観察されることから,自律的に起こっていると考えられる(1)。

 

> ラット大脳皮質で,実際に双安定性を報告した例がある(2R)。

: Up state -62.3 ± 7.7 mV, down state -74.0 ± 9.0 mV.

: ドーパミンを軟膜の表面にかけると,それぞれ -68.2 ± 8.0 mV, -81.9 ± 12.7 mV に低下.


References

  1. 内田 2007a. 神経細胞の膜電位がもつ双安定性と状態遷移: その仕組みと情報処理における役割. 生物物理 47, 362-367.
  2. Lavin et al. 2005a. Prenatal disruption of neocortical development alters prefrontal cortical neuron responses to dopamine in adult rats. Neuropsychopharmacology 30, 1426-1435.