作業記憶 Working memory

10-4-2014 updated

  1. 定義: 作業記憶とは
  2. 関連する脳領域
  3. Working memory に影響する要因

関連項目




定義: Working memory とは

短期記憶と長期記憶が異なることはよく知られているが,作業記憶 working memory(または作動記憶)とはこの短期記憶の概念を拡大したもので,何らかの行動を成し遂げるための短期記憶を意味する概念である。論文でみられる定義を示しておく。

  • Working memory is defined as the process by which information is maintained in an activated, on-line state to guide behavior (Baddeley, 1986). 

Ozonoff & Strayer 2001a. J Autism Dev Disord. 31, 257-263.

 

  • Working memory is defined here as the immediate retention of information needed to respond to a current task or activity (Honig, 1978).

O' Shea et al. 2004a. J Psychopharmacol. 2004a 18, 502-508.

 

  • 作業記憶は情報貯蔵の一時的な型で,容量に限界があり復唱を必要とする(2)。作業記憶はしばしば,"心に"留めて置く情報といわれている。 ... 作業記憶は普通,ランダムに選ばれた数字やアルファベットなどのリストを聞いた後に,誤らずに復唱できる最大の個数である数唱範囲 digit span により研究されている。普通は 7 ± 2 である。

関連する脳領域


> Working memory に関係する脳領域は,複数存在する(2)。

: 情報の入力される感覚系によって,digit span が異なるという研究結果がある。

: たとえば,見た場合は長く覚えられるが,聞いた場合は覚えられない。

: このことから,感覚系によって作業記憶の貯蔵場所が違う可能性が指摘されている。

 

> Working memory は,integrity of prefrontal cortex に関連が深い(1I)。

 

 


Working memory に影響する要因


> ラットでは,発生途中で海馬PFCの細胞分裂を阻害する MAM 処理で working memory が低下(1R)。

> 幼児期に海馬を除去しても低下する(1D)。

> Dorsolateral PFCGABA 伝達を遮断すると,working memory が低下する(2)。

: GABA 伝達は,錐体ニューロンの活動を調節することで作業記憶における情報処理を支えている。


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References

  1. Gourevitch et al. 2004a. Working memory deficits in adult rats after prenatal disruption of neurogenesis. Behav Pharmacol 15, 287-292.
  2. ベアーほか 2007a (Book). 神経科学 脳の探求. 西村書店. 主に 24 章を参考にしました