統合失調症でのドーパミン系の変化(ドーパミン仮説)

6-13-2015 updated

  1. 概要

関連項目



概要

統合失調症 schizophrenia では ドーパミン 系の異常な活性化がみられることが多くの症例で確認されており,原因の一つと考えられている。これは 統合失調症のドーパミン仮説 と呼ばれる。主要な論点は以下の通りである(3I)。

 

  • ドーパミン D2 受容体(D2R)のアゴニスト(受容体を活性化)であるケタミン ketamine や MK-801 を投与すると,症状が悪化する。 
  • 統合失調症の患者で,D2R の発現が上がっているというデータがある(5I)。
  • 逆に,D2R のアンタゴニスト(受容体をブロック)が,主として陽性症状の病態を改善する。実際に,全ての統合失調症薬は D2R をブロックする薬剤である(5)。


線条体 striatum は,脳のなかで最も dopaminergic neuron の密度が高く,統合失調症との関係も深い領域である(5I)。

Presynaptic alterations

2012 年のメタアナリシス論文では,統合失調症の患者ではドーパミンの合成および分泌,すなわち presynaptic な変化が起こっていることが示されている。


> Dopamine に関する PET/SPECT のデータを分析した論文(5I)。

: 44 個の論文,1960 - 2011 年,618 人の患者と 606 人のコントロールが解析に含まれている。

統合失調症の患者ではドーパミンの合成および分泌が多い。

: D2R, D3R 量の増大がみられるが,drug-naive patient では変わらず,薬の影響と思われた。

: 実際に,向精神薬が D2R 量を増やすことが霊長類で確認されている。

: ドーパミントランスポーター DAT には変化がみられない。


個々の報告

> 統合失調症の患者では,線条体 striatumドーパミン受容体 D2R 量が増加する(8)。

: この変化は発症前に起こるので,予防の面からも着目されている。

> D1R 量も増加するという報告があるが,D2Rの場合ほどコンセンサスは得られていない(8)。

> 1950年代に,Laborit らが抗ヒスタミン作用をもつクロルプロマジンが陽性症状を改善すると報告(4)。

: のちに,これがドーパミン受容体への結合によることがわかった。

因果関係の証明: VTA 領域のドーパミン神経

Ventral tegmental area (VTA 領域) のドーパミン神経と統合失調症の関係は数多くのデータから支持されているが,「統合失調症患者で〜の活性が高い」などという相関関係の報告がほとんどである。2013年に,VTA 領域のドーパミン神経の選択的活性化および抑制により,初めて因果関係が証明された(4R)。

 

> マウス VTA の TH+-DA neuron に halorhodopsin を発現,光刺激での抑制を可能にした(4R)。

: TH (tyrosine hydroxylase) は Tyr から DOPA を合成する酵素。DOPA は DA の前駆体の前駆体。

: 光刺激を与えている間のみ,VTA TH+-DA neuron を選択的に抑制することが可能。

: 照射中のみ tail-suspension and sucrose-preference tests で「やる気のない」行動がみられた。

: 尻尾で宙づりにされたときに逃げようと暴れる行動が増える。うつ症状だと諦めてじっとしている。

: スクロース水(甘い)と水のボトルがあるときに,スクロースの方を嘗める回数が多いとやる気あり。

 

> 逆に,channelrhodopsin 2 (ChR2) の発現で光刺激による DA neuron 活性化が可能になる(4R)。

: マウスに持続的なストレスを与えることでうつ症状を作り,それが回復するかどうかみている。

: 光刺激の間のみ,tail-suspension test, sucrose-preference test でうつ症状が抑制された。

: Forced-swim test で時間解像度を上げて解析しても,VTA neuron と行動の因果関係がみられた。

 

> VTA DA neuron の投射先のうち,NAc が最もうつ症状に関連している可能性が高い(4)。

: NAc glutamatergic neuron を選択的に阻害すると,VTA DA neuron 刺激の効果がなくなった。

: NAc の活動電位をみると,一過性の DA 放出ではなく,DA で作られる tone が行動に重要。

: Phasic activation of VTA が重要,と表現されている。

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References

  1. McGuire et al. 2008a (Review). Functional neuroimaging in schizophrenia: diagnosis and drug discovery. Trends Pharmacol Sci 29, 91-98.
  2. Perez et al. 2012a. Aberrant dopamine D2-like receptor function in a rodent model of schizophrenia. J Pharmacol Exp Ther 343, 288-295.
  3. Lodge and Grace 2007a. Aberrant hippocampal activity underlies the dopamine dysregulation in an animal model of schizophrenia. J Neurosci 27, 11424-11430.
  4. Tye et al. 2013a. Dopamine neurons modulate neural encoding and expression of depression-related behaviour. Nature 493, 537-541.

  5. Howes et al. 2012a. The nature of dopamine dysfuction in schizophrenia and what this means for treatment. Arch Gen Psychiatry 69, 776-786.
  6. 八十島,小林 2006a. 線条体のドーパミン神経伝達による行動制御. 実験医学 24, 2285-2293.