脂肪酸の β 酸化

4-15-2017 Last updated

 

 

このページは β 酸化@本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが,最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 

  1. 概要: β 酸化とは
  2. β 酸化の各反応

 

以下は別のページです。

  • 飽和脂肪酸の酸化
  • 奇数鎖脂肪酸の酸化

関連項目

 



概要: β 酸化とは

β 酸化 β-oxidation とは,脂肪酸 fatty acid が生体によってカルボキシル基に対して β の位置(3 位,つまり COOH の C を含めて 3 個目)に酸化を受け,分解する現象をいう(2)。 重要な点は,以下のとおりである。

 

  • この反応はミトコンドリアで起こる(1)。

β 酸化の各反応

1. アシル CoA の生成

補酵素 A (coenzyme A, 右図) は,アシル基 R(C=O)- の転移反応に関わる補酵素である。以下のようにアシル基と ATP 依存的にメルカプト基 -SH で結合し,脂肪酸などのエネルギー準位を上げる(1)。

 

これによって,脂肪酸は以降の反応をしやすくなる。

 

メルカプト基とカルボン酸の基本的な反応は,以下の式の通りである。


 

したがって,補酵素 A を HS-CoA を書くと

 

R(C=O)-OH  +  HS-CoA  →  R(C=O)-S-CoA  +  H+

 

という反応が起こり,アシル CoA が作られる(1)。

 

これは ATP を消費する反応である(1)。はじめに脂肪酸と ATP が反応して acyl-AMP + PPi となり,次に AMP と HS-CoA が置換される。

 

2. ミトコンドリアマトリックスへの輸送 - カルニチン

上記の反応は,ミトコンドリア外膜 outer membrane で起こる(1)。しかし,以降の反応は mitochondria matrix で起こるため,アシル CoA はミトコンドリア内膜を超えて輸送されなければならない。ミトコンドリアの構造はリンク先を参照のこと。

 

輸送にあたって,脂肪酸はアシル CoA から カルニチン carnitine に受け渡される(1)。図 (3) のように,カルニチンとの融合は CPT-I (carnitice acyltransferase I or carnitine palmitoyl transferase I), 内膜の通過は CACT による。

 

Matrix では CPT-II によって再び Acyl-CoA とカルニチンに戻される。

 

3. 脂肪酸の酸化(偶数鎖,飽和脂肪酸の場合)

脂肪酸の酸化は,β 炭素を起点にして起こる。よって β 酸化と呼ばれる。まず β 炭素とは何かを復習しておこう。ここでは簡単に述べる。詳細は 脂肪酸のページ を参照のこと。

 

 

これは高度不飽和脂肪酸 DHA の構造である。炭素番号は -COOH 基の側から数えるが,二重結合は反対側を ω とする数え方もよく用いられる。「ω3 脂肪酸」とは,ω 炭素から数えて 3 番目に二重結合が入っているということである。

 

この考え方では,-COOH 基のある側は COOH の炭素を除外する。つまり COOH の隣の炭素が α 炭素,その隣が β 炭素... となる。脂肪酸の酸化では,α および β 炭素の間に二重結合が導入され,COOH 基の炭素と α 炭素がアセチル CoA として遊離する。

 

この反応は,

  1. 切りたい部分にから水素を奪い(酸化),二重結合を導入する。
  2. その部分を水和する。
  3. 残る側から再び水素を奪い(酸化),新たな -COOH に相当する二重結合を作る。
  4. 残る側を CoA を結合させつつ,アセチル CoA を切り取る。

という順で行われる。

 

この 酸化 → 水和 → 酸化 というパターン は,メチレン基 CH2 をカルボキシル基 C=O に置換するときによく使われるステップである。TCA 回路の反応 6, コハク酸 succinate の酸化のステップと似ている。

 

最初の反応は,アシル CoA デヒドロゲナーゼ (acyl-CoA dehydrogenase) に触媒される(2)。水素を奪う反応,すなわち酸化反応である。

 

FAD が還元され,高エネルギー物質である FADH2 が作られる。

 

生成物は trans-Δ2-enoyl CoA という一般式で書かれる。トランス型,-COOH 基から数えて 2 番目の炭素に二重結合のあるエノイル + CoA ということ。

 

ちなみに,エノイル enoyl の en は「二重結合」の意味で,エノール enol の en と同じ使い方である。ol がアルコールなので,enol は「二重結合をもったアルコール」である。

 


 

 

oyl は「カルボン酸のアシルラジカル」の意味らしい。まとめると,Δ の 2 番目に二重結合をもったカルボン酸ができあがる。

 

この反応では,NAD+ を還元するのに十分な自由エネルギーが放出されないため,仕方なく FAD が使われる(1)。TCA 回路の succinate の酸化と同じ理由である。

 

次に,導入した二重結合に水を付加する。酵素は enoryl CoA hydratase である(1)。L 体のみが作られる。

 

 


今度は NAD+ を使って再び脱水素(酸化)する。酵素は L-3-hydroxyacyl CoA dehydrogenase である(1)。

 

生成物は 3-ketoacyl CoA である。

 

 


最後のステップでは,もう一分子 CoA をもってくる。アセチル CoA が遊離し,炭素が 2 個少ない脂肪酸(アシル CoA)ができあがる。

 

酵素は β-ketothiolase である(1)。

 

 

 

 


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References

  1. Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
  2. 岩波 理化学辞典 第5版: 使っているのは 4 版ですが 5 版を紹介しています。
  3. "Reactions through mitochondrial membrane" by Matsan5 - 投稿者自身による作品. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.