脳の構造と機能の基礎(ヒト)

8-31-2017 Last update

 

このページは ヒトの脳 @本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが,最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 


このページ

  1. 脳の構造
  2. 概要: ヒトの脳の特徴
  3. 皮質と髄質
  4. 白質と灰白質 white/gray matter
  5. 脳から末梢へ伸びる神経

 

部分構造: 下にないもの

  1. 神経核 Nucleus
  2. 神経細胞 Neuron
  3. アストロサイト Astrocyte
  4. 脳梁 Corpus callosum
  5. 帯状回 Cingulate gyrus
  6. 血液脳関門 BBB

 

関係する実験手法

  1. MRI, functional MRI, BOLD
  2. DTI (diffusion tensor imaging)
  3. Connectivity (structural, functional)
  4. FCD map:

病気

  1. 統合失調症 Schizophrenia
  2. アルツハイマー病 Alzheimer's disease
  3. てんかん Epilepsy


脳の構造

脳 Brain

前脳 Prosenchephalon

終脳(大脳)Telencephalon (cerebrum)

前頭葉 Frontal lobe

前部前頭葉 Prefrontal regions, prefrontal cortex (PFC; humanrat)

背外側前頭前皮質(dorsolateral prefrontal cortex)

内側前頭前皮質 (mPFC: medial prefrontal cortex)

眼窩前頭皮質 Orbitofrontal regions, orbitofrontal cortex (OFC; human, rat)

中心溝(ローランド溝)Central sulcus

脳梁 Corpus callosum

頭頂葉 Parietal lobe

後頭葉 Occipital lobe

後頭葉皮質 Occipal cortex

視覚野 Visual cortex

外側溝(シルビウス溝)Lateral sulcus

島皮質 Insular cortex

側頭葉 Temporal lobe

大脳基底核 Basal ganglia

線条体 Striatum

被殻 Putamen

尾状核 Caudate nucleus

尾状核頭 Head of caudate nucleus

尾状核体 Body of caudate nucleus

尾状核尾 Tail of caudate nucleus

視床下核 Subthalamic nucleus

淡蒼球 Globus pallidus

外節 External segment

内節 Internal segment

大脳辺縁系 Limbic system

扁桃体 Amygdala

帯状回 Cingulate gyrus

海馬体 Hippocampal formation

海馬 Hippocampus (Human, rat)

CA1

CA2

CA3

歯状回 Dentate gyrus

海馬台(海馬支脚) Subiculum

前海馬支脚 Presubculum

傍海馬支脚 Parasubiculum

海馬傍回 Parahippocampal gyrus

嗅内皮質 Entorhinal cortex

嗅周囲皮質 Perirhinal cortex

海馬傍皮質 Parahipoccampal cortex

間脳 Diencephalon (interbrain)

視床 Thalamus

視床下部 Hypothalamus

腹内側核 VMH

松果体

中脳 Mesencephalon (midbrain)

蓋板(上丘 Superior colliculus,下丘)

大脳脚

被蓋

腹側被蓋野 VTA

黒質 Sunstantia nigra

 

菱脳(りょうのう)Rhombencephalon

後脳 Metencephalon, hindbrain

橋(きょう) 

小脳 Cerebellum

延髄


前脳,中脳,後脳,菱脳 は発生からみた区分である。脳の発生初期に,神経管に前脳胞,中脳胞,後脳胞という3つのふくらみが生じ,そこから各部分が発達してゆく。後脳と延髄を合わせて菱脳と呼ぶ。



大脳表面のしわは人によって様々な形があるが,中心溝 central sulcus と外側溝 lateral sulcus は共通してみられる。


中心溝の前の部分が 前頭葉 frontal lobe である。中心溝の後方には 頭頂葉 parietal lobe と 後頭葉 occipital lobe がある。外側溝の下側には 側頭葉 temporal lobe がある。


その他の用語

脳幹 brain stem は解剖学用語ではなく一般名称で,定義が定まっていない。延髄,橋,中脳が含まれることが多いが,間脳を含めている文献もある。

 

側頭葉 temporal lobe は,右図に示すとおり皮質 cortex の一部分である(表面だけを意味する)が,内側側頭葉 medial temporal lobe はさらに内側の構造,すなわち海馬 hippocampus, 脳幹 brainstem, amygdala のことを意味する。

 


概要: ヒトの脳の特徴

進化的見地からみた脳 のページも参照のこと。

 

構造上の特徴

> 霊長類およびいくつかの哺乳類の脳では,大脳新皮質が折り畳み構造をもつ。 Gyrencephalic という(7)。

: 齧歯類の大脳皮質は平坦である。

 

> ヒトの脳は,大脳新皮質が厚いという特徴がある(7)。 このために言語,抽象的な概念などの高度な思考が可能。 

: ヒトの大脳皮質の容積は,チンパンジーの 2 - 3 倍である。

: ニューロンの数,シナプスの数ともに他の霊長類よりも多い。

 

> 脂質 lipid に富む器官である(dry wet の 50% 以上が脂質)(6I)。 

: 脂肪酸の 40% はリン脂質,35% は糖脂質である。

 

エネルギー代謝の特徴

> エネルギー消費が活発な器官である。

: 体積ではヒトの体の約 2% だが,血液の 15% は脳のために使われている(4)。

: 休止状態でも,体のエネルギー消費の 20% を占める(5)。

 

> グルコース glucose, ケトン体 ketone body, 乳酸 lacate など限られた物質しかエネルギーにできない。

 


灰白質と白質

色による区分である。灰白質 grey matter は,神経組織のうち細胞体(核,細胞質など)が存在している部分を示す。肉眼で見てもやや色が濃く見える。大脳では主に皮質 cortex にあるが,脊髄では髄質 medulla にみられる。

 

白質 white matter は,神経細胞体がなく神経線維の束が存在する部分である。神経線維はグリア細胞(末梢ではシュワン細胞,中性では稀突起グリア細胞)の細胞膜が巻き付いてミエリン鞘を形成している。この細胞膜が白く見える。

 

脳や脊髄の内部に,神経細胞体が塊を作って灰白質になっているものを 神経核 nucleus という

Wikipedia "neuron" から転載



皮質と髄質

場所による区分である。器官の表層部のことを 皮質 cortex といい,大脳の皮質は大脳皮質 cerebral cortex,小脳の皮質は小脳皮質 cerebellar cortex である。

 

これに対して,器官の深部は髄質 medulla と呼ばれるが,「大脳髄質」などという言い方はあまりされない。皮質・髄質という区分は,脳以外の器官(副腎皮質,副腎髄質など)でも使われる。

 

大脳皮質 Cerebral cortex

大脳皮質は,新皮質 neocortex,原皮質 archicortex,旧皮質 paleocortex の3つに分けられる。ヒト大脳皮質の厚さは 2 - 4 mm で,ここに約 150 億のニューロンが存在する(1)。 1 mm角の中に,9 - 10 万個のニューロンがあることになる(2)。この数は脳のどの領域でも大体同じであるが,ヒトやある種の霊長類の visual cortex には,この 2 倍の数のニューロンが存在する(2)。

 

新皮質は等しく 6 層の構造をもつので,等皮質 isocortex とも呼ばれる。一部の領域では 6 層構造は不明瞭であるが,発生の過程で必ず層構造の段階を経ている。これに対して,原皮質および旧皮質は層構造をもたないため,異皮質 allocortex とも呼ばれる。

 

等皮質と異皮質の中間の構造を示す部分もあり,これは中間皮質 mesocortex と呼ばれる。ヒトでは帯状回,海馬傍回などがこれにあたる。

 


脳から末梢へ伸びる神経

  1. 嗅神経
  2. 視神経
  3. 動眼神経
  4. 滑車神経
  5. 三叉神経
  6. 外転神経
  7. 顔面神経
  8. 内耳神経
  9. 舌咽神経
  10. 迷走神経
  11. 副神経
  12. 舌下神経

多くの脊椎動物の脳からは,神経が末梢に直接投射している。これらを脳神経 cranial nerves という。

 

左に示した12対は主な脳神経である。この名前のほか,神経が脳と接続されている部位によって順に番号がつけられている。左の1-12がその番号に相当するが,ローマ数字で表されることが多い。



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References

  1. 河合良訓 監修, 原島広至 文・イラスト (2005).

 

  1. Logothetis 2008a (Review). What we can do and what we cannot do with fMRI. Nature 453, 869-878.
  2. Kim et al. 2000a. Regional neural dysfunctions in chronic schizophrenia studied with pesitron emission tomography. Am J Phychiatry 157, 542-548.
  3. Leopold 2009a (news). Pre-emptive blood flow. Nature 457, 387-388.
  4. Attwell & Laughlin 2001a (Review). An energy budget for signaling in the gray matter of the brain. J Cereb Blood Flow Metab 21, 1133-1145.
  5. Eckel & Robbins 1984a. Lipoprotein lipase is produced, regulated, and functional in rat brain. PNAS 81, 7604-7607.
  6. Silver 2015a (Review). Genomic divergence and brain evolution: How regulatory DNA influences development of the cerebral cortex. BioEssays 38, 162-171.